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南米で見る、主にアメリカのドラマの感想などを書いています。
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『Doomsday Book』コニー・ウィリス

疫病の大流行を経験した近未来。イギリス、オックスフォード大学歴史学部の学生が前例のない中世へのタイムトラベルを行い、研究のために送り込まれる。当時存在した病気に対する予防その他は万全のはずだったが……。

という話です。不運に不運が重なるワースト・ケース・シナリオが実にSF。

「現在」でも中世でもその生活や人物が生き生きと描かれ、少なくない登場人物が巧みに描き分けられて無駄なく使われていて読み応えがあります。

特に中世の生活描写に引き込まれて一気に読み終えたんですが、読み終わってから考え直すとストーリーのバランスはそれほどよくないかも。

前半が引っ張りすぎ、後半というか最後の部分はあっさりしすぎの感じが。

タイムトラベルは「ネット」という論理を使って行われ、「行き先の時代に存在しない病原菌などは通ることができない」と説明されますが、この女子学生キヴリンの体内に埋め込まれ、彼女が見聞きしたものを録音できる「コーダー」は通れるのかとか、最後の方ではかなり気軽に現代のものを持ち込んでいるのではないかという疑問が残ります。

また、ルールを厳密に適用するならキヴリンが現地で死んでいた場合を考えてそのコーダーを発掘するということはそもそも不可能なのではないかとも思えます。「同一人物が同一の時点に複数存在することはできない」というなら、同一の時点で同一のコーダーが複数存在してしまう(発掘地点にコーダーがずっとあったら、少なくとも現在のキヴリンの体内に埋め込まれた時点で同じものが存在することになる)ことがタイムパラドックスの種になりうるのではないかという気がするんですけど。

近未来なのに携帯電話もインターネットも存在しないらしいことに最初違和感があり、現代とは違うパラレルワールドの話かと思いましたが、そうではないようですね。出版が92年なので、作者の執筆時点ではどちらもそれほど一般的ではなかったということでしょうか。20年そこそこしか経っていないのに隔世の感があります。
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